絶品の叡王戦 あるいは伝家の宝刀・四間飛車穴熊
ついに出しやがった。
先日のblogにも書きましたが、
「羽生さん相手には通用しない」と悟り、封印したはずの
「四間飛車穴熊」を負けたらカド番、勝てば五分に戻すという
天王山の決戦で、遂に広瀬八段がぶっこんできやがった。
広瀬八段の黄金の道あるいは合コンにおける敗着 - リンゴォblog
自らの限界を突きつけてきたその相手に、
今の自分は通用するのか
観ているだけで熱くなるような青春は、明日決着。
しかし、そんな熱いタイトル戦を尻目に、
今日の主役カードは何と言っても叡王戦
村山七段vs稲葉七段の角換わり大戦だ。www.eiou.jp
序盤から大駒をぶった切って相手玉に迫る村山、
反撃を機会を逃さず、一気に体を入れ替える稲葉、
盛り上げに盛り上げる解説の情熱モリシタとえりりん。
「20時までに終わると言ったのは一体何だったんでしょう」
「それにしてもプロというのは、将棋が強いですね~」
「終盤は本当に面白いですね」
と、純粋に目の前の対局を楽しんでいる情熱モリシタさんの
解説の通りの盛り上がりで、鳥肌の立つ対局でした。
村山七段、稲葉七段は奇しくも今年の電王戦で負けた二人。
負けた屈辱は、勝つことでしか拭えない。
ふたりの強い意志が、このような名局を生んだように思える。
これまでは、リアルタイムの対局を見る機会が限られており、
一部の棋士の対局しか見ることができなかった。
しかし、この叡王戦の開催と中継によってこれまでリアルタイムで
見ることができなかった多くの棋士の対局を見ることが可能になった。
「棋士のコンテンツ化」
これが叡王戦が実現したイノベーションなのではないかと思っている。
「段位別予選システム」と「持ち時間1時間制」の組み合わせによって
若手、中堅、ベテラン、大御所、タイトルホルダーと幅広い年齢層と
滅茶苦茶に個性的で魅力的な「棋士」をコンテンツ化することに成功した。
ベテランがバリバリの若手に意地を見せて肉薄する様子や、
時間に追われる棋士の様子を1日に何回も解説付きで見られる贅沢さ。
今日も、小刻みに揺れ続けて考え続ける村上七段とぼやき続ける稲葉七段、
それぞれの様子を見ているだけで、不思議なくらいに興奮した。
イノベーションの産みの親、川上会長は独自の経営観で
事業を着実に成長させている稀代の名経営者だ。
ニコニコ動画はもちろんだし、最近だと当初は「無理に決まってる」と
酷評されていた「超会議」ですら、
きちんと事業的な位置付けを確立するなど、名手を連発してきている。
川上会長の経営観はこの著書が一番よくまとまっていると思う。
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インターネットビジネス界随一のファンタジスタが放った新手の
「叡王戦」、「電王戦」は、
「将棋」ではなく「棋士」をメインコンテンツとして考える、という
コロンブスの卵のようなイノベーションとして後世にまで
語られるのではないかという期待までしてしまう。
それほどまでに叡王戦で見る棋士は、みな魅力的で感動的だ。
遂に僕が最も好きな棋士、菅井竜也六段の登場。
もちろん、王位戦では「広瀬八段の青春」にも決着がつく。
これはもう仕事なんてしている場合ではないのだ。